実話〜頭文字(initial)─K─



それにしても、Kさんはどうしてあれだけの事故に遭って無事だったのでしょうか?


僕はこう思います。


人間というのは、日常生活ではその人の持っている潜在能力のほんの一割程度の力しか発揮する事が出来ないのだと言われています。


一流のアスリートでも、自分の意志で潜在能力の百%を発揮するのは殆ど不可能なのだそうで……


それを少しでも潜在能力に近づける為に、プロのスポーツ選手やオリンピック選手などは日々鍛錬をしている訳です。



それをKさんは、命の危機に遭遇したあの瞬間に、己の持つ潜在能力の全てを発揮する事が出来たのではないのでしょうか?




「ハンドパワーだよ♪
ハンドパワー♪」


Kさんはそう笑って会社の作業台を手のひらで勢いよく叩きました。



バン!



その瞬間。



「痛ぇ!」


「どうしました、Kさん?」



「トゲが刺さった!」


「トゲ?」




よく見ると、ささくれ立った作業台の小さな木のトゲが、Kさんの手のひらにしっかり刺さっていました……


軽自動車にぶつかっても平気だったのに、爪の先程のトゲで大騒ぎする……なんとも不思議なKさんの《ハンドパワー》です……



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