実話〜頭文字(initial)─K─



そして翌月になりました。


今までとは内容の異なる職場に不安を覚えながらも、僕はいつもより少し早い時間に会社へと着き新車センターの建物へ向かいました。


新車センターの所在地は、僕がそれまで仕事をしていた店舗の敷地内にあります。


車5台位の作業が出来るスペースに、プレハブの事務所がくっついたようなその場所は、ピカピカの新車を扱うのには似つかわしくない何とも古びた建物でした。



「あれっ、シャッターが開いてる……もう誰か来ているのかな?」


見たところ、作業場の方にも事務所の方にも人の姿は見当たりませんでした。


「変だな……」


僕は釈然としないままシャッターをくぐり、ひとり作業場に立ち尽くしていました。



すると……



ピコッ…ピコッ…ピコピコッ…



「ん、……この音はなんだ?」


どこからともなく聴こえてくる、小さな電子音。これは一体どこから聴こえてくるのでしょうか?


不審に思った僕は、その電子音の音源を探すべく作業場の中を歩き始めました。


(一体何の音だろう?……何かのテスターの作動音か?…でも、誰も作業なんてしていないしなぁ……)


何とも不可解な謎の電子音……耳をすませて作業場をうろうろと歩き回っているうち、僕はついにその音源を探し当てたのです。


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