実話〜頭文字(initial)─K─



「アイツ……車を『床の間』にでも飾ってんのか?」


お客さんとセールスマンのやり取りを見ながら、呆れたようにそんな事を洩らすKさんの表情はどこか不機嫌そうです。


きっと、ネチネチと重箱の隅を突つくようにクレームをつけるお客さんの態度が気に入らなかったのだと思います。



しばらくして、そのお客さんは自分の車に乗って帰って行ったのですが、ゲートを抜けて一般道へと出て行くそのクーペの後ろ姿を目で追いながら……Kさんはボソリと、とんでもなく大胆な言葉を呟くのでした。





「あの車、事故っちまえば面白ぇんだけどな……」




確かに車がクシャクシャになれば、些細な事は気にならないかも!



……って、それはいくらなんでもねぇ……



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