実話〜頭文字(initial)─K─
Kさんに《予言者》の能力があるとは、僕には思えません。
ですが……
それから数日後、あのお客さんの買ったばかりの新車のクーペは、大いなる変貌を遂げ積載車に載って、店舗へと戻って来たのです。
「うわ……左側面ベッコリだよ……」
話によるとそのお客さん、ドライブ中にカーブを曲がりきれずにガードレールに接触。左側面を前から後ろまで、まるで熊が両前足で引っ掻いたような大きな傷跡をこしらえてしまったのです。
幸いにしてケガは無かったものの、買ったばかりの新車が見るも無惨な姿に変わり果てお客さんはかなりヘコんだ様子でした。
「ムハハ♪細かい事グダグダ抜かしてるから罰が当たったんだ。ざまあみろ♪」
何とも嬉しそうなKさんの顔。
更に、遠くでほくそ笑んでいるだけでは飽きたらず、Kさんはそのお客さんの方へと近づいて行ったのでした。
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