実話〜頭文字(initial)─K─
「これ、アンタの車かい?災難だったねぇ」
さっきまでの嬉しそうな顔はどこへやら、お客さんの前では神妙な表情を装って話し掛けるKさん。
「えぇ……まだ、買ったばかりの新車なんですよ……」
「なんと!これ、新車なのかい!それゃあ~気の毒に!」
知ってるくせに……わざとらしい……
「一応、保険には入っているんですけれど、元通りキレイに直りますかねぇ?」
そんなお客さんの問い掛けに、Kさんはキッパリと。
「ムリだな!」
「えええぇぇぇ~~!
ど~してですかああ~!」
「いいかい?そもそも、メーカーの塗装と板金屋の塗装ってのは塗装のやり方が違う訳よ!
板金屋の腕で上手く直す事は出来ても、元通りにはならねぇ!《事故車》は《事故車》だ!」
事故を起こして傷心しているお客さんへ、まるで死刑宣告のような言葉を浴びせるKさん。
そして
「まぁ、フレームまでイッてる訳じゃねぇんだから、大丈夫!真っ直ぐ走るよ♪」
と、大したフォローにもならない言葉を付け足してお客さんの肩をポンと叩くのでした。
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