実話〜頭文字(initial)─K─



仕事をしながら、鼻歌を口ずさむのが癖のKさん。


「あ~め~あ~め~ふ~れ~ふ~れ~♪も~っとふ~れ~~っと♪」



その日は八代亜紀の往年のヒット曲『雨の慕情』を軽快に口ずさみながら仕事に励んでいました。



すると、その隣で同じように仕事をしていた『ケンジ』さんが……


「うわっ!古ぃ~歌うたってるなぁ~Kさん♪」


なんて言って、からかってきたのです。



ケンジさんというのは、Kさんよりも7~8歳年下の一緒に仕事をしている先輩なのですが、このケンジさんとKさんがまた、些細な事で言い争いをするのです。


「おっ、なんだケンジ!じゃあ~お前だったら、《雨の歌》って言ったら何歌うんだよ?」


Kさんにそう尋ねられ、ケンジさんは顎に手をあて暫く考えた挙げ句……



「シトシトピッチャン~シトピッチャン~~♪」


もはや、十代~二十代前半の読者さんには解らないかもしれませんが……『橋幸夫』さんの歌う時代劇『子連れ狼』の主題歌となった曲です。



「お前の方がよっぽど古いじゃね~かっ!」


「だけど『雨』って言ったらヤッパリ、シトシトピッチャンじゃないの?」


「いや!『雨』って言ったら、八代亜紀だろ!」



雨の歌の定番について、互いに譲らずKさんとケンジさんは言い争いを始めてしまいました。



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