実話〜頭文字(initial)─K─



「また降って来るぞ♪」


何だか嬉しそうに、ケンジさんが呟く声が聞こえました。


「えっ?」


僕がケンジさんの方へと振り返った瞬間。



ザアァァァァーーーッ



背中越しでも判ります。さっきまで小降りだった雨が、まるで滝のような激しい雨へと変わったのでした。



Kさんは、ビショ濡れになりながら次に手掛ける新車の方へと必死に走っています。


「うわっ!Kさん、タイミング悪っ!」


思わずそう声に出す僕に対してケンジさんは……


「いや、むしろタイミングが良すぎるんだよ……さっきから」



「さっきから?」


「そう。さっきから、Kさんが外に出た時は必ずどしゃ降りになってる!」


何それ……?


しかし、ケンジさんの言葉を裏付けるようにKさんが車に乗って工場に帰って来ると、雨は再び小降りに……



車から降りて来たKさんは、タオルで頭をガシガシと拭きながらしきりに首を傾げていました。



「なんでだ……?」



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