実話〜頭文字(initial)─K─



「そっちに行ったぞ!そっち!」


「ああ~惜しいっ!」


工場の中を飛び交う軍手の玉。


     玉。


   玉。


それを器用に交わしながら、右へ左へと逃げ回る鳩。


「なかなか当たらねぇもんだな……」


そう呟きながら、ポンポンと玉を投げつけるKさん。


(こんな事やっていて、果たして良いのだろうか……?)


ふと冷静に、僕がそんな事を考え始めたその時でした。



「何をやっているのかね、君達は?」



突然Kさんの後ろから聞こえて来たその声の主の姿を見て、僕はあんぐりと口を開け、固まってしまいました。



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