実話〜頭文字(initial)─K─



「店長……アンタは新入社員に自分の車洗わせるのかよ?」


「うぅ……」


痛い所を指摘された店長は、瞬間、言葉を詰まらせました。


「まぁ、それは……そんなに大した事じゃ無いだろう」



罪の意識など、これっぽっちも持たない店長の態度に、今度はKさんが声を荒げたのです。






「バカヤロウ!!
社員はアンタの召使いじゃねぇんだ!
アンタみたいなのがいるから、若い奴らがやる気を無くしちまうんだよっ!」



このKさんの言葉に、店長は一言も返す事が出来ませんでした。


至極当然の事なのですが、この事を店長に面と向かって言う人間は、今までいなかったのでしょう。


店長は、少し反省した様子で俯き、そのまま僕達に背中を向けて何も言わずに自分の店舗の方へと帰ってしまいました。


すぐそばで、そんなやり取りを傍観していた僕は、何だか気分がスッとしました。


きっと店長も、もう二度と新入社員に自分の車を洗わせるような真似はしないでしょう。


この事はこれで全てが終わったのだと、僕は思っていました……



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