実話〜頭文字(initial)─K─



「Kさん!」


僕が叫んで駆け寄ると、Kさんは笑顔で軽く手を挙げて答えました。


「おぅ~♪」


「何やってんですか!こんな所で!」


何故Kさんがこんな事をしているのか、僕は訳が分からず、思わず大声を上げてしまいました。


「いや、鍵が掛かってるもんでよ、洗車場まで運べなくてよ……」


「そうじゃ無くて、なんでKさんが洗ってるんですか!」



すると、僕の質問にKさんは穏やかな笑顔でこう答えたのです。









「もう、この話は『カタ』がついたからな……
店長の車がコレじゃあ、さすがに可哀想だろ♪」



その言葉を聞いた時……僕は、あぁ、Kさんはこういう人だったんだよな……と、何故だか自然に納得してしまったのです。


相手が誰であろうとも、間違っている事は間違っているとはっきり言う。


しかし、相手が反省したのであれば、今度は自分がした無礼に対するけじめをしっかりつける。



Kさんは、そういう人でした。



店長の車を洗うこの行為は、Kさんの店長に対する最大限の敬意であり、自分なりの“けじめ”であったのです。




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