実話〜頭文字(initial)─K─
それから、およそ二時間後……
「さっき車に轢かれちまってよ……」
「は・・・?」
職場に戻って来た、どう見てもかすり傷ひとつ負っていないKさんの言葉の意味が解らず、僕は尋ねました。
「《轢かれそうになった》じゃなくて《轢かれた》んですか?」
「そうなんだよ!びっくりしちまったよ!」
なんだそれ……
車に轢かれてびっくりしたって……
そりゃ、こっちがびっくりだよ!
「なんでどこもケガしてないんですか?」
「それが、不思議な事になんとも無かったんだよな……」
きっと読者の皆さんは、ちょっとかすめた程度の弱い当たり方だったんじゃないかとお思いでしょうが……Kさんの話を聞く限り、それはとんでもない間違いだという事がわかります。
何しろ、Kさんを跳ねたという相手の軽自動車は……
ボンネットは折れ曲がり、バンパーとヘッドライトは奥に陥没……と、それは酷い壊れようだったらしいのです!
.