実話〜頭文字(initial)─K─



Kさんの実家は農家をやっているので、売り物にならない屑野菜など、豚の餌になりそうな物はありますし、庭も広いので、大きくなった豚でも飼う事が出来るだろうとKさんは思いました。


可愛い子豚の間だけ飼って、大きくなって飼えなくなったから返すというのは、なんだか無責任な気がしてKさんも本意では無かったのですが、それでもこのままでいるよりは実家の方が豚の為にも良いだろうと、Kさんは早速実家の親父さんの所へ電話をかけました。



「…そういう訳でさ」


『なんだ、そんなにデカくなっちまったのか……それだったら……










食っちまえばよかったじゃねぇか』


電話越しの親父さんの言葉に、Kさんは思わず持っていた受話器を落としそうになりました。


「食う訳ね~だろっ!」


「なんで?あの豚は食肉用の豚だぞ?……そうだ、業者に頼めば結構な値段で引き取ってくれるぞ」


農家の親父さんの感覚では、豚と言えば米や野菜と同じ農産物。豚肉になる物だというのが当然の感覚だったのでしょう。


親父さんと電話で話を終えたKさんは、腕組みをして考え込んでしまいました。


「う~~ん……」



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