実話〜頭文字(initial)─K─



Kさんは急いで庭に走り、豚の前に立って業者から豚を守ったのでしょうか?



いえ、違います。



Kさんは家の中にいて、庭に出て行く業者の背中を、黙ったままただ、ずっと見つめていました。


親父さんは、そんなKさんを見て少し気の毒に思ったのでしょう。


「あれは、元々食肉用の家畜豚だったんだ……ペットにするのが無理な話だ。仕方の無い事だよ」


そんな言葉をKさんにかけたのです。


命は大切な物、何物にも代え難い物である……それは勿論ですが、我々人間は自ら手を下していないだけで、生きる為に様々な魚を食べ、肉を食べている事も事実です。


ですから、ここで親父さんが非道い人などとは言うのは、やめておきましょう。



そして、やがて庭で豚の様子を見てきた業者が、再びKさんと親父さんの所へと戻って来ました。



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