実話〜頭文字(initial)─K─



「う~~ん……こりゃあ二十万ぐらいかかるかもなぁ~」


ボンネットを開けながら、なんとも冷静にそんな事を呟くKさん。


ようやく車から降りて来た女性も、予想以上に酷い車の壊れ方に唖然としています。


しかし、それ以上に気になるのはKさんの容態の方です。


「あの……本当に大丈夫なんですか?」


「うん、ラジエターまではイッてないみてぇだよ♪」


「いや、車じゃなくて!」


「あっ、オレ?
いやあ~♪軽自動車に勝っちまったよ♪」


と、あっけらかんと笑いながら。


「なんか、バンパーがタイヤにつっかえて動かなそうだな……この車、工具ある?」


…と、軽自動車のラゲッジをゴソゴソと漁って、ホイールナットレンチを握り締め、しゃがみ込んでバンパーをこじり始めるKさん。



「あの……なんか、すいません……」


そう言ってKさんの傍らに立ち尽くす女性の心境は、さぞや複雑だった事でしょう。



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