実話〜頭文字(initial)─K─
「おいっ!テメェ~!
なに他人んち垣根にションベンひっかけてやがんだああぁぁぁっ!」
そうです。その男は、事もあろうにKさんちの垣根に立ちションをしていたのでした。
Kさんと目が合って慌てて顔を背けたのも当然。
逃げ出そうにも、まだ事が途中だったのでその場に立っているより仕方が無かったのです。
「おいっ!いつまでやってやがる!早く止めろ!」
「そ、そんな事言われても!」
確かにそんな事を言われても、任意に出したり止めたり出来ないのが生理現象というものです。
Kさんも男ですから、その事は即座に理解して苦虫を噛み潰したような表情で、男が用を足すのを待っていました。
男はずいぶん我慢していたのでしょうか、オシッコはなかなか止まりません。
「おいっ!いい加減にしろ!
いつまでしてやがんだっ!」
「すいません、もう少しですから!」
なにしろ、家の主の目の前で垣根に立ちションされているのです。
Kさんのイライラも限界に達しようという時、ようやく男の生理現象は収まりました。
すかさずKさんの怒声が飛びます。
「テメェ~!よりによって俺んちの垣根に小便なんてしやがって!」
Kさんの怒る気持ちは大いに分かります。
こんな現場を目にすれば、誰だって怒らずにはいられないでしょう。
現場を押さえられた以上、全面的に悪いのは男の方です。
常識的に考えて男は何を言われようと、ここはひたすら平に謝る以外無いと思うのです。
ところが、Kさんに対する男の態度はそんな常識とは少し異なったものでした。
男は自分の行いに反省するというよりはむしろ、周りの状況が気になって仕方がないという感じで、Kさんの話もうわのそらで落ち着きなく辺りをキョロキョロと見回していたのです。
「聞いてんのか!コノヤロウ!」
さらに声を上げるKさんに……
「すいません、あまり大声を出さないでもらえますか」
「なんだと!もういっぺん言ってみろ、おいっ!」
男のなんとも不誠実な一言に、Kさんはぶちキレてしまったのです。
堪らず男の胸ぐらを掴みそうになったKさん。
すると、その時でした……
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