実話〜頭文字(initial)─K─
















「あいつ、俺達がいくら言っても
ゴミ当番やらねぇんだよ!
全くとんでもねぇ奴だよっ!」




「ゴミ当番………?」



「そうだよ!いつも、うまい事言って逃げやがるんだ!」


そう言って憤慨するKさんに対し、口をぽかんと開いて呆然とする刑事達。


「それだけですか?」


「そうだよ!あいつ、とんでもねぇ奴だろ!」


「……………」


刑事達は、このKさんの捜査に全く役に立たない供述に返す言葉もありません。


「……そうですか………それは大変ですね、では我々はこれで………」


変なオヤジに付き合って、無駄な時間を費やしてしまった。


心の中では、そう思っていたに違いありません。


早々と背を向け、Kさんの周りから離れようとする刑事達。


ところが、その背中越しに、Kさんは刑事達を呼び止めたのでした。


「おい、ちょっと待ちなよ刑事さん!」


「まだ何か?」


「いいから、俺が戻って来るまで少しそこで待ってなよ♪」


Kさんは刑事達にそう言い残すと、自分の家の中に入って行ったのです。


刑事の一人が首を傾げながら言いました。


「いったい何ですかね?『待っていろ』って……」


「さあな、コーヒーでも差し入れてくれるんじゃないのか?」


日夜市民の安全を守る為に身を危険に晒して働く警察官に敬意を表して、近所の住民が差し入れを届ける。


田舎ではよくある光景です。


刑事達も、せっかくだからとその場にとどまってKさんが戻って来るのを待っていたのでした。


そして、待つ事1~2分……


Kさんは、刑事達のもとへ戻って来たのです。



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