ADULT CHILDREN
警察の人に家まで送ってもらい、家に入るとすぐに母がいた。


母を見たのは久しぶりだった。


警察の人が父母と話す。


私はその話が終わるのを待った。


5分もしないうちに警察官も帰り、父がリビングに来て「そこに座りなさい」と床を指差した。



私は言われた通りに座り、父と母が私の正面に並んで座る。


その時の二人の顔を
私は今でも忘れられない。




「どうしてあんなところに居たんだ?」



父は優しい口調で聞く。



「家にいたくなかった」



本当の事を言った。



「なんで家にいたくないんだ?」



その質問には答えられなかった。

答えられなかったというより、なんと言えばいいのかわからなくて
言葉を探していた。


すると


父が私の言葉を待たずに口を開く。



「おまえお父さんがどんな仕事しているか知ってるよな?」


「うん」


急に話の路線はずれる。



「おまえがこんなんじゃお父さんにも影響してくるんだよ。悪いけどもうあんな子達と関わるのはやめてくれないか?」



結局父は自分の事しか考えていない。



そうはっきりわかった。



「何?あんな子達って…」


仲間を否定された事に腹が立った。

改まって正座していた足を崩し、片足の膝を立てて座り直した。



「シンナー吸ってる子ばかりなんだろう?最低じゃないか」



父がそう言うと今まで父の横で黙っていた母が
父の言葉に賛同するように父を見た後、口を開く。



「どうせあの愛美とかいう子でしょ?やめなさい。あそこの家は片親で水商売してるんだから」




その言葉は絶対に許せるものではなかった。




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