ADULT CHILDREN
けんちゃんは紗枝を連れてエレベーターに乗っていく。
きっと、今日の誕生日の事なんて今のけんちゃんの頭にはないだろうと思った。
私が苦しい時、
紗枝はあんなに励ましてくれたのに
私を心配してくれたのに
この時の私には
紗枝を心配する余裕はなかった。
手にした幸せは
考える程にするすると零れ堕ちていく。
なかなか部屋に戻る事ができず、マンションのエントランスで暫く時間を潰した。
部屋のドアをゆっくりと開けると玄関には二人の靴が並んで置いてある。
ドクンドクンと高鳴る胸が締め付けられる。
恐る恐るリビングに行くと、ソファーでけんちゃんが紗枝の顔の傷を消毒していた。
「…紗枝…どうしたの?」
ついさっき下で見ていた事などなかった事のようにして私は驚いて見せた。
「またお母さんにやられたって」
けんちゃんは紗枝から視線をずらす事なく紗枝に代わって返事をする。
持っていた物をテーブルに置き、私もソファーに座った。
見慣れているはずの二人の距離があまりにも近く、自分がそこにいてはならないような威圧感に襲われた。
きっと、今日の誕生日の事なんて今のけんちゃんの頭にはないだろうと思った。
私が苦しい時、
紗枝はあんなに励ましてくれたのに
私を心配してくれたのに
この時の私には
紗枝を心配する余裕はなかった。
手にした幸せは
考える程にするすると零れ堕ちていく。
なかなか部屋に戻る事ができず、マンションのエントランスで暫く時間を潰した。
部屋のドアをゆっくりと開けると玄関には二人の靴が並んで置いてある。
ドクンドクンと高鳴る胸が締め付けられる。
恐る恐るリビングに行くと、ソファーでけんちゃんが紗枝の顔の傷を消毒していた。
「…紗枝…どうしたの?」
ついさっき下で見ていた事などなかった事のようにして私は驚いて見せた。
「またお母さんにやられたって」
けんちゃんは紗枝から視線をずらす事なく紗枝に代わって返事をする。
持っていた物をテーブルに置き、私もソファーに座った。
見慣れているはずの二人の距離があまりにも近く、自分がそこにいてはならないような威圧感に襲われた。