ADULT CHILDREN
これまで一度も実年齢以外に見られた事がなかったのに、この時五つ近く上に見られたのは
けんちゃんといたからかもしれないと思った。


一生懸命、背伸びして服を選んだり化粧を変えたりしたからだろうと。



「これどっち?」


大きな交差点に出て道を聞いてくる俊にまた適当な方向を伝える。


「右」


「おっけー右ね。あ、彼氏はいるの?」


「今いない。そっちは?」


「もう3年くらいいない」


「へぇ…」


「どんな人だったの?元カレ」


すぐにけんちゃんの顔が浮かんだ。


忘れたいのに…



「言わなきゃ駄目?」


「いや、嫌な思い出?ごめんね。俺なんか変な事聞いたかも」



それから私が黙っていると、俊は場を盛り上げようとしていたのか、血液型は?誕生日は?と
色んな質問をしてきていた。


相槌をうつばかりの私にお構いなく俊は一人で何かを語っていた。


見た事もない住宅街をとろとろ走る俊が道に迷った事は何となく感づいてはいたけど、
一人夢中で語っている俊に暫く声はかけなかった。
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