ADULT CHILDREN
私が産まれてまだ間もない頃、
母のお腹には早くも新しい命が宿っていた。
弟が産まれたのは
私がまだ2歳にも満たない頃。
弟が産まれる少し前からの2ヶ月間、
私は祖母の家にひとり預けられていた。
母、父。
そして弟は百キロ離れた地元で3人。
「さえちゃんが可哀相でたまらなかった」
物心がついた頃、祖母にそう言われたのを覚えている。
弟が産まれて1ヶ月が過ぎた頃、
両親は弟を連れ私を迎えにやってきた。
その時私は泣きもせず笑いもせず、
ただ一人でコタツの中に入り
小さな赤ん坊を抱く母と父を見つめていたらしい。
母も父も私を抱きしめたり、声をかけたりする事はしなかったと祖母は言っていた。
コタツで小さくなっていた幼い私は
きっとそれをずっと待ち望んでいただろうにと。