ADULT CHILDREN
「姉ちゃん…」


廊下で立ちすくむ私の元に1番下の弟、修平がか細い声で洋服の裾を掴む。


私は声を出さず目で返事をした後
修平を部屋に連れて入った。


「お母さん達どうしたの?」



幼い修平のこの時の不安は
どんなに大きかっただろう。


今にも泣き出しそうな修平の顔を見て、
私は折れそうになる自分の心に力を入れるよう笑顔を作った。



「なんでもないよ。大丈夫。」



修平の頭軽くを撫でていると修平は私の顔を見上げて言った。


「離婚?」


まだ小学校に入ったばかりの修平の口から出た言葉に
ズキンと胸に痛みが走る。



修平は修平なりに、私と同じように両親の不仲を感じ取っていたのだろう。


「ううん、違うよ」


悟られないように作った笑顔を保とうとしたけど
きっとあの時私は
ちゃんと笑えていなかった。



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