ADULT CHILDREN



父と最後に会ったのは母の葬儀の時。



会ったというよりも見かけたと言った方が正しいのかもしれない。


私は葬儀の時、父と言葉ひとつ交わさなかった。



親戚の目が怖かったからじゃない。


ただ黙ってお焼香をし眠る母に合掌する父に対して『憎しみ』という感情が溢れ、声をかける気分にはなれなかった。



本来なら弟の変わりに前に立ち、来てくれた人達に頭を下げるはずだった父。


でもその父は今、前に立つ私や弟に向かって頭を下げている。



何を思っているんだろう…――――





何を考えているんだろう…――――




お母さんになんて話しかけてるの――



眠る母に手を合わせる父を見ながらそんな事ばかり考えていた。

< 694 / 719 >

この作品をシェア

pagetop