ADULT CHILDREN
父と最後に会ったのは母の葬儀の時。
会ったというよりも見かけたと言った方が正しいのかもしれない。
私は葬儀の時、父と言葉ひとつ交わさなかった。
親戚の目が怖かったからじゃない。
ただ黙ってお焼香をし眠る母に合掌する父に対して『憎しみ』という感情が溢れ、声をかける気分にはなれなかった。
本来なら弟の変わりに前に立ち、来てくれた人達に頭を下げるはずだった父。
でもその父は今、前に立つ私や弟に向かって頭を下げている。
何を思っているんだろう…――――
何を考えているんだろう…――――
お母さんになんて話しかけてるの――
眠る母に手を合わせる父を見ながらそんな事ばかり考えていた。