ADULT CHILDREN
彼がそこにいるだけで
自分の部屋がいつもと違って見えた。
いつものように二人でただ話をしているだけなのに、どこか胸が騒いでいたのは
いつもより彼との距離が近かったせいかもしれない。
その日もあっという間に時計の針は進み
4時5分前を指していた。
「そろそろ帰るよ」
彼が立ち上がろとした時
聞こえてきた足音に慌てて私と彼は姿を隠すため毛布に潜りこんだ。
毛布から顔だけを出してドアを開けた人が父である事を薄目で確認した。
私がいる事を確認しただけなのかすぐにドアを閉めて父は戻っていく。
息をとめるように固まっていた私は、父が完全に行ってしまったのを確認して
毛布に潜っている彼に大丈夫だよと伝えた。
「危なかったね」
「焦ったー…」
毛布から顔を出した彼の方に首を向けた瞬間、また私は緊張に襲われた。
今までで一番近い距離にいる彼と目が合った時、私はもう彼の視線から逃れる事ができなかった。