ADULT CHILDREN
家に帰ってきてすぐに鳴った電話の相手は彼だった。

幸い家には私一人でリビングで電話を取った。


彼は変わらず優しいまま。



「なんか元気ないね」


相槌ばかりうつ私に言った彼の言葉がきっかけだった。



「前の彼女と別れてないなら言ってくれればよかったのに」



もしも、もしも本当に別れていたなら
本当に私だけなら
彼は否定してくれるはず。





なのに


「………ごめん」


それは最悪のシナリオを辿る言葉。



「…いいよ。でも…私はいいや。2番目は嫌だから。」



彼は電話越しに黙りこんだ。



やっぱり私は2番なんだ。


否定してくれないの?



別れたくないって言ってくれないの?



泣いているのがバレないように受話器のマイク部分を手で塞いだ。



「…ごめ」

「ごめん親、帰って来たから」



謝られる前に
嘘をついて電話を切った。


これ以上自分を
惨めにしたくなかったから。
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