大嫌い、でも、大好き
物語の始まり(千鶴side.)
ウラハラ
「ちーづー!」
「日和?どうしたの?」
眠くなる午後の授業の終わり、後は帰るだけの午後3時。
幼なじみで親友の崎元日和が私に駆け寄ってきた。
「今日ね今日ね!桧月先輩とカラオケ行く事になったの!」
桧月先輩は私たちの二つ年上の先輩で日和が片思いしている先輩でもある。
いつもいつも…アタックしては砕けアタックしては砕けを繰り返してやっとデートの権利をもぎ取ったらしい日和はキラキラしていて私から見ていても恋する乙女。
「よかったじゃない。頑張ってね?」
「もちろんだし!こんなチャンスは二度もない!!」
――…その意気込みが空回りしなきゃ良いけど。
って思いながら余計な口は挟まないのが吉だとよくわかっているから曖昧に笑ってみた。
「千鶴は?あのアマノジャクとどうなってんのよ?」
「あまのじゃく…あぁ、悠希の事?」
日和は悠希をあまのじゃくと呼ぶ。
確かにあまのじゃくなところもあるかもしれないけど、あまり良い呼び方じゃないよね。
「別に悠希とは何もないよ。ただのお隣りさんで悪友?みたいな感じだもん。」
「……千鶴も大概鈍いなぁ。」
「何が?」
「何でも!まっ、千鶴はずっと千鶴でいてよね?」
日和はたまぁによくわからない事を言い出す。
それは今に始まった事じゃないけど。
悠希の事もそう。
彼は出会いこそ強烈だったけど…今じゃ居て当たり前だし、いなきゃ寂しいって思う。
大切な友達だもの。
「日和、先に帰るね。買い物頼まれてるんだ。」
「そうなの?じゃあまた明日!」
「うん。頑張ってね?」
あんまり押せ押せで行かないように。
って一応忠告だけはしてみたけど多分無意味な事なんだろうな。
私は鞄を肩に掛けて、日和に手を振りながら教室を出る。