大嫌い、でも、大好き


学校から家までは歩いて20分くらいかかる距離。

ほとんど通る事のないガタガタ道をゆっくりと散りはじめた桜を見ながら歩く。


本当の本当は


―――…悠希が好きだよ。


そんな事言えない。

だって…悠希は私を嫌いでしょ?


先輩や友達にはいっつも笑って


「可愛いね。」


って言ってるのに…私には一度もそんな事言ってくれない。

だからね、絶対に"好き"なんて言わないの。


この気持ちが悠希にしられなかったらこれから先もずっと今までみたいに隣にいられるから。



――――…なんてね。

ただ私は臆病なだけなんだよ。


私だってただの女の子なんだよ?

悠希のたった一つの言葉で有り得ないくらい傷付いたりだってしちゃうんだから。


悠希、貴方はわかってる?












――――――――
―――――――
――――――




「千鶴ちゃん!今日もお使いかい?」


「おばちゃん…私もうお使いなんて年じゃないってば。

いつものやつくれる?」



いつもパパに頼まれた物を買いに行くお店のおばちゃんは気さくで親しみやすい。

だけど未だに私を小さな子供みたいに扱うからあんまり良い気分にはなれない。



「村の子供達は私らにとっちゃいつまでも可愛い子供達なんだよ!


はい、挽き肉と玉ねぎ。
今日はハンバーグだね。悠希も一緒かい?」


「そうだよ。悠希ハンバーグ大好きだからね。

じゃあまたね!」


「気をつけて帰るんだよ!」



お代は払わない。月に一回纏めて支払うのがルールみたいになっているから。

この村の生活が染み込んでいる私は都会では生きていけないかも。
って思うのはこの瞬間。



挽き肉と玉ねぎが入った袋を右手で持って歩きだす。


家まではあと5分。




< 8 / 26 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop