大嫌い、でも、大好き

カサカサと音がする買い物袋をユラユラと揺らしながら歩いていても誰ともすれ違う事はない。

それが日常で当たり前。



「おせーよ、千鶴!」


「………悠希?何やってるのよ、こんな場所で。」



こんな場所………私の家の庭。
芝生で整った庭は我が家の少しの自慢だったりもする。

庭の芝生を無意味にちぎっては捨て、ちぎっては捨てを繰り返していた悠希の背中を買い物袋で攻撃。



「……ってぇな。暴力反対!」


「無意味に芝生を傷付けた罰よ!

ライラ〜、ただいま。」



悠希を見下ろしてから、視界の端っこに入った我が家の愛犬ライラの頭をヨシヨシって撫でた。



「いい子にしてた?」



そう聞けば当たり前だと言うように―ワンッ、と吠えて尻尾を振ってくれる。



「後で散歩行くから待っててね?


――…悠希、早く中入りなよ。入ったらちゃんと手洗いなよ?」


「お前と違ってガキじゃねぇんだから言われなくてもわかってるっつーの。」



芝生をちぎるのをやめた悠希は機嫌が悪いのかわからないけどいつも以上にチクチクした言い方をしている。



「どうしたの?なんか機嫌悪そうだけど…」


「―…別に。何もねぇよ。あってもお前にだけは教えねぇよ!」



――――…ねぇ悠希。

私は悠希が大好きだよ?

でも悠希は私が大嫌いだよね。


私にだけは教えないって言われたら胸がチクチクするの。

それでも私はそれを悠希には言わないよ。


悠希とずっと一緒にいるためだもん。


近くて遠い友達でいるためだもん。



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