あまいの。
歩幅が大きい彼の後ろを、小走り気味に追いかける。
手を伸ばせば届きそうな距離なのに、「たくちゃん」の背中は大きすぎて、なんだか遠い。
風がザァッと吹いて、無防備なシロツメクサを揺らす。
日の光に反射する、白い景色が眩しくて…小刻みに動かしていた足を止めた。
遠ざかっていく背中。
…学ランの黒までもが、酷く眩しい。
眩しい。
…眩しくて、痛い。
「…たくちゃん」
ねぇ、知らないでしょ?
『だいすきだよ』
廊下ですれ違うの、ほんとはすごく楽しみなの。
教室の窓から、黒い野球帽が小さく見えるだけで嬉しくなるの。
…知らないでしょ?
『あたしも、たくちゃんだーいすき!』
あたしが、こんなにドキドキしてること。
「〜たくちゃん!!」
…彼の足が歩みを止める。
サラサラと、二人の間の空気が流れた。
「…その呼び方やめろって──」
「かんむり、作って」
「…は?」
「あたし、一人じゃ作れないもん」