流れ橋
「大変だったね。藍子。」朋子の目が涙ぐんでいる。

わたしは、朋子の顔を見た途端、昨日の出来事が思い出されて胸がいっぱいになった。何か、話そうと思っても言葉が出てこない。こんな言葉にならない思いを、朋子は、理解してくれたようだ。ただ、何も言わず一緒に駅のホームまで歩いた。

駅のホームまで下りていくと、ちょうど電車が来た。

わたし達は急いで電車に乗り込んだ。電車内は、学生やサラリーマンで満員状態だ。わたし達は、乗り込んだ車両の隅に押しやられた。

電車が出発して、しばらくしてからわたしは、昨日あったことを朋子に話しはじめた。

朋子は、最初黙って聞いていたが、話に田中俊の名前が出てくると、「えっ、俊くんが。」とずいぶん驚いていた様子だ。

「なんか、妙な巡り逢わせだね。彼と藍子は。」

わたしは、朋子にまだ話していないことを思い出していた。
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