流れ橋
それは、卒業アルバムのことだった。わたしは、まだ負け犬と書かれたことを気にしていた。

書いたのは、わたしの同級生の上田だ。でも、このことを知ってるであろう田中俊のことが、わたしは胸に引っ掛かった。こんなふうに、相手に近づくほど胸の奥の方で、忘れたいことが思い出される感じがたまらなく、つらかった。

電車が、段々と速度を落としていく。わたし達は、ハッとした。乗り越したかもしれない。一瞬、冷や汗をかいたが、同じ制服をきた学生たちがまだたくさんいる。電車がとまった。わたし達は、人の流れに身を任せて、電車を降りた。

駅のホームをでると、眩しい日射しが照りつけている。エアコンのない教室で、テストを受けることを想像すると、わたしは、気が遠くなりそうだった。

「行こうか。」わたし達は、重い足取りで歩きだした。今朝の爽快さが、まるで嘘のようだった。

学校の校門が見えて来るまで、わたし達は、黙ったまま歩き続けた。そして、わたしは突然「朋子。」と呼んだ。
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