流れ橋
目をむけた雑草は、すっかり伸びきっていて、ガードレールからはみだしている。

朋子は、反対側に生えているその雑草を一本ずつ、手で乱暴につみとっている。

そして、少し怒ったような顔をして話だした。

「藍子は、いろんなこと我慢しすぎだよ。自分の気持ち押し殺してる。言ってくれないと分からないことだってあるよ。私は、いつだって、藍子の味方なんだから。」

「ありがとう。朋子。わたし、今日こうして話せてなんだかすっきりした。解放されたみたい。」わたしは、いった。

「本当、すっきりした顔してる。それに、田中くんのこと、よかったね。彼は、上田みたいな人じゃないよ。藍子がこれ以上、人間不信にならなくて本当によかったよ。」朋子は、そういって笑った。
わたしもつられて笑いだした。

朋子とは、帰りの電車の途中で別れた。いつもなら、あと2駅つぎで降りるのだけど、今日は、父の入院している病院に行かなくては、ならなかった。
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