流れ橋
静かにそう行った。

「そんなの嘘だよ。じゃあ、わたしが見た人は、誰なの」つい、大声で叫んでいた。

「藍子。落ち着いて。」お母さんが、わたしの肩を抱いて、制した。
そして、わたしを椅子に座らせていった。

「不思議ねぇ。お互い、スーパーで、会っているんだから。夢と現実で。お母さん、どちらも本当のこといってるんだと思う。そういうことって、たまにあるのよ。きっと。」お母さんは、真面目な顔をしている。

「藍子は、昔からよく不思議な体験してたじゃない。お母さん、藍子の話、信じてるの。あなたは、お父さんの姿をちゃんと見たのよ。」

「お母さん。」わたしは、母を見た。夢のような現実の話か。

「藍子は、お父さんのこと、見つけてくれたんや。そうだから、お父さんの命、助かったんじゃないか。」父が、手を強く握った。

「じゃあ、何、スーパーが三途の川だったの?そんなの、わたし聞いたことないよ。」
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