流れ橋
とうとう、一階の部屋に水が流れ込んできていた。

水といっても、透明ですんだ水ではなく、泥や石ころが混じってあって茶色く濁っている。
あっというまに、部屋を汚していく。

川から流れて出た石や木の破片が、家の窓硝子を割って一瞬のうちに、すべてを飲み込むのである。

わたしは、姉に手を引っ張られ部屋を出た。階段のすぐ下で、
両親が何か叫んでいる。声は聞こえるのだけど、風の音で、かき消され、何を言っているのか分からないのだ。
あまりの恐怖に、姉とわたしは、階段を下りることができないでいた。

階段の下を覗くと、両親の顔が見える。

おじいちゃんが、階段を上がって、こちらに来ようとしていた。

その時だ。ちょうど、わたしの後ろのドアが開いたような気がした。

妙に後ろがスースーするのだ。

後ろから風が通っているのを感じた。

何だろう。わたしは、振り向いた。振り向くと、ドアが少し開いていた。
< 32 / 201 >

この作品をシェア

pagetop