流れ橋
ドアの向こう側に、信じられないものが見える。

わたしが後ろを振り向くと、開いたドアの隙間から窓が見えた。

その窓の外に、土に埋まっている人間の横顔が見えた。

「ひっ。」わたしは、肩で呼吸をした。

その瞬間、ぐっと、強く手を引っ張る力を感じた。

わたしの手を、姉が引っ張っている。さらに、姉の手をおじいちゃんが引っ張っていた。
「行くぞ。体に力を入れろよ。」

そうして、家族全員が無事に家から避難することができた。

雨がやんだのは、わたしたちが避難して、少したってからだった。
水が引いた後、周囲は、どこもかしも、泥や石ころ、木の破片が転がっていた。おまけに、辺り一面、ヘドロの腐った臭いがしていてたまらなく、この臭いをかいだわたしは、熱がでた。家の掃除には、一週間ほどかかり、おじいちゃんは、この掃除疲労が原因で、後に寝込んでしまうほどで大変な作業だった。
わたしは、熱でうなされている間、悪夢をみていた。
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