流れ橋
結局、この日本人形の持ち主は、誰なのかは、ついに分からなかった。

持ち主が見つからなかったあの日本人形は、わたしの通った小学校に飾られることになった。
あの、こわかった水害をみんなが忘れないためだとか。

今も、学校の正面玄関に、ガラスケースに入れられて大事に保管されているとのこと。

わたしが卒業してから、あの日本人形は、学校の怪談伝説のひとつになっていた。

持ち主を探して、夜中。校舎を歩きまわるそうだ。

そして、わたしも伝説の人になっていた。

何でも、最初に発見したわたしは、後に霊感が身につき、今は、山奥で修行しているとのことらしい。

伝説をぶち壊して悪いが、わたしは、普通の高校生になっていた。
朝の5時。犬の蘭ちゃんとのどかに散歩している。

川の水は、穏やかに流れていた。

そして、今もこの小川には、簡素なつくりの橋がかかっていた。

この橋を眺めていると、あの水害の後、おじいちゃんがいっていた言葉を思いだした。
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