流れ橋
でも、それでもいい。いつもの毎日、いつものわたしでも。でもやっぱり、今回だけは、期待したかった。

突然、朋子がベンチの上に立ち上がり、腰に手をあてて叫んだ。

「来るならこ~い。」
わたしと同じこと考えていたのだ。

ホームにいる人たちが、一斉に、こちらをチラチラ見る。おまけに、クスクス声も聞こえてきた。

朋子は、何度も大声で「来るならこ~い」を連呼する。

カンカンカン。線路の踏み切りの音が聞こえてきた。電車がもうすぐ到着する。

わたしは、立ち上がった。ベンチの上に。そして、叫んだ。大声で。「来るならこ~い」と。

わたしたちの声は、電車の音でかき消された。
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