流れ橋
今日も念入りに、店内を見渡す。

なんか、安くなってないかな。もちろん、お菓子コーナーのチェックも怠らなかった。

とうとうわたしは、しゃがみこんで品物を選んでいた。

その時、後ろに気配を感じた。

わたしは、商品をとるのに邪魔になったと思い、「すみません。」
そういって、急いで立ち上がり横によけた。
わたしは、後ろを振り返ると、後ろにいた人は、そのままレジの方に歩いていく。

わたしは、心臓がとまりそうになる。わたしの後ろを素通りしていったのは、わたしの父親だ。

なんで、スーパーにいるんだろう。不安が波のように広がっていく。

まだ、お父さんの背中が見える。追いかけないと、間に合わなくなる。

わたしは、買い物カゴをその場に置いたまま走った。

どうして、ここに?胸がしめつけられる。わたしは、全力で走る。お父さんは、レジの方に向かってはず。ほんの一瞬、目を離しただけ。買い物カゴを置いただけなのに。

お父さんの姿は、なかった。
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