流れ橋
このじんわり体に染み込んでくる暑さで、わたしは、落ち着きを取り戻していった。

照りつける太陽のおかげで、頬をつたう涙が乾いていく。わたしは、大きく深呼吸する。
落ち着いて。父親を見たことをみんなに知らせないといけない。

スーパーで、父親を目撃したことで、なぜこれほどに、動揺するのか。

これは、周りに父親と同じ病気がいる人でないと理解されない。

父親は、重いうつ病と診断され、一時は入院するほどだった。

病院を出てからも症状は、わたしの目からしても不安定だった。
父親が病気にかかって半年間。

父親は、自発的に外出したことは一度としてなかったのだ。

いつも、全身になまりが入っているように、体が重いらしく、一日寝たきりで、顔つきもぼんやりしていた。

家からスーパーまで、歩いたら20分は、かかるだろうか。

この暑さ、父親の病気の症状を考えると、あまりにありえない行動だった。
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