流れ橋
何よりわたしを不安にさせたのは、父親の服装だった。

わずかな時間だったので、具体的に覚えていないけど、妙にキチンと身だしなみが整っていたことは覚えている。

特に、わたしが目を惹いたのは、靴だった。
黒の革靴を履いていたのだ。

この暑さの中、近所のスーパーに行くのに、サンダルではなく、黒の革靴なんて。

妙に、足だけ浮いてみえたほどだった。

わたしの頭の中で、警報がなっている。

「どうか、したのか?」田中俊は、まだ肩から手を離していなかった。
「ごめん。ありがとう、大丈夫だから。」わたしは、慌てて彼に笑顔を向けた。

「本当に大丈夫だから。」お礼を言って、肩にかかっている手を、そっと外した。

「顔色悪いよ。家まで送るよ。」彼は、自分の自転車を指さしていった。

「本当に大丈夫だから。わたしも学校帰りだから、自転車で来てるし。」この状況に、わたしは、混乱していた。
< 61 / 201 >

この作品をシェア

pagetop