流れ橋
救急車のスピードが増して、みるみると彼の姿は、小さくなって行った。

救急車の中で、何度も父の名を呼んだが、意識がないようだ。血の気がなく青い顔をしている。わたしは、体中がブルブルと震えが止まらない。その時に、隣のお姉さんが、ぎゅっと手をつないでくれた。救急センターに着いたら、知らせを聞いたお母さんとお姉ちゃんが来ていた。

「お父さん。お父さん。」お母さんは、何度も呼び掛けるが返事がない。

父は、すぐに処置室に運ばれた。

わたし達は、外に出され処置が終わるのを、ただひたすらに待った。

待ち合い室で待ってる間、誰も喋らない。
時間がどのくらい過ぎたのか分からないが、処置室から、一人でてきて、わたし達を呼んだ。

中に、入ると父は、ねむったままでいる。

「発見が早くて、処置が間に合いました。」父のすぐそばにいた医師がいった。

その言葉を聞いて、お母さんは、父の手を握り、「よかった。」と何度も言いながら泣いていた。
< 71 / 201 >

この作品をシェア

pagetop