流れ橋
仏壇の前に置いてあった空のビン。中身は、すべて睡眠薬だった。
たぶん、死ぬつもりだったと思う。この世に生きることが、そんなに苦しかったのかな。
わたしには、分からなかった。

その日の夕方になっても、父は、目を覚まさなかった。

「藍ちゃん、明日テストがあるでしょ。今日は、お姉ちゃんと帰りなさい。」お母さんは、だいぶ気持ちが落ち着いたようだ。

「うん。わかった。」そう、わたしが言うと、「テスト、頑張ってね」少し笑って、わたしと握手をする。わたしは、泣きそうになる。「今日は、ありがとうね。よく頑張ったね。」わたしは、涙が止まらなくなって、大声を上げて泣いた。

「着替え、後から持ってくるね。」姉は、お母さんにそういってから看護師さんに挨拶をしている。入院に必要なものとか、聞いているのだろう。こんな時、とても頼りになった。

わたし達は、姉の車で一度、家に帰ることになった。

わたしは、お姉ちゃんの車に乗りこむと、そのまま眠り込んでしまった。
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