流れ橋
「仏壇の前に、封筒が置いてあったんだ。あれ、たぶん遺書だと思う。」わたしは、姉の背中ごしに話した。

「それ、中身見たの?どうして、そんなの書いたのかね。」お姉ちゃんは、頭をかきながら、なんだか泣いているように見えた。

「わたし、中身見てない。触ってもないんだ。部屋は、キレイだよ。ただ、寝ていただけだもの。ただ・・」言葉が後に続かない。

今日一日で、わたしは、一体何回泣いたのだろう。こんなにつらく苦しい思いをするなんて。

あー、そうだ。この苦しみ、あの人も抱えて、もがいていたのだ。きっと。

生きるのって、こんなに苦しかったっけ。

涙が流れて、流れて自分では、とめることが出来ない。

姉も泣いていた。わたしに、背中を向けたままに。

わたし達姉妹は、恥ずかしくなるくらい泣いた。まるで、小さな子供のように。

「一緒に部屋まで行こうか?それでさ、元気になったら、見せてやろうよ。それまで取っとくの。」

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