流れ橋
姉が、そういった。

「いいの?わたし、急いで準備するね。」わたしは、何だかホッとした。今日は、誰かと一緒にいたかった。
病院に着くころになると、日が暮れかかっていた。

夕焼けが、まぶしいくらい空に広がっている。いつもなら、こんな日は、蒸し暑い。しかし、今日は、風がよく吹いていて涼しかった。

病院では、晩御飯の準備がされていた。

お父さんは、点滴だけで、今日は、ご飯を食べることが出来ないらしい。

お父さんの病室の前についた。

「入るよ。」お姉ちゃんがドアをあけようとする。手が、震えていたのが見える。

病室の中から、話声が聞こえてきた。

お姉ちゃんは、そっとドアをあける。

中に入ると、両親そろってこちらを見た。お父さんは、申し訳なさそうに顎を手でさすっている。

「これ、着替え持ってきたよ。」
姉は、何でもない素振りをしているけど、わたしは、無理だった。
顔を見た途端、涙がこぼれそうになった。
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