流れ橋
わたしは、姉に聞いた。
「そうね、いろいろ考えたけど、またもとの場所にそっと、戻しておくのはどう?」

「仏壇の前に?」わたしがたずねた。

「そう、仏壇の前にね。何事もなかったかのようにね。そうすれば、お父さんが、勝手に処分すると思うわよ。」姉は、駐車場の車に乗り込もうとしていた。

「どうして?あれは、遺書だよ。みんなで話し合った方がいいんじゃない。」わたしは、知らないふりなんて、できないと思った。

「だから、知らないふりしてようよ。それで、いいんだって。その方が、お父さんだって自然にもとに戻りやすいと思うわけよ。」姉が、こちらをチラっと見ていった。

「あまり、大げさにしない方がいいと思っただけよ。藍子、何食べたい?」姉は、車を走らせながらいった。

「分かった。ご飯何でもいい。」わたしは、一応は納得したふりをした。しかし、心の中で、不満がくすぶっている。

お姉ちゃんは、実際何も見ていない。
< 83 / 201 >

この作品をシェア

pagetop