流れ橋
あの倒れている現場を実際見たら、そんなこといえないんじゃないかな。

何で、死のうとしたのか本人に聞いた方がいいと思うし、みんな苦しんだのに。

わたしは、何かすっきりしない感じがした。
人が自分で、命を絶とうとするなんて、普通じゃない。それなのに、そっとしていようとか、何事もなかったかのようになんて。

できない。自殺は、悪いことではないの?

わたしは、お姉ちゃんに聞いた。
「ねぇ、なんでみんなでお父さんのことかばうの?あの人が、一番いけないんじゃないの?」

姉は、ゆっくりハンドルを切った。「誰もかばってないし、こうなってしまったことについて、悪い人なんていないよ。」

辺りは、すっかり暗くなった。「和食屋さんでいい?この先にあるんだけど。」姉は、わたしに聞いた。

車は、市内から帰る途中で、海岸沿いを走っていた。こちらからの方が近道だった。海が見える。まだ、誰か遊んでいた。

「その店でいいよ。」
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