流れ橋
わたしは、窓を開けて海を見た。海は、暗くて底がないように見えた。空を見上げると、星が小さくでている。ここから、見ると小さく光っているようにしか見えないけど。今のわたしには、その光が、優しく感じられた。海からの風が少し冷たくて心地よい。

「藍子、お父さんが許せないの?」姉が、小さな声で聞いてきた。
わたしは、そんなふうには考えていなかった。頭にきているわけでも恨んでいるわけでもなかった。

「そんなんじゃないよ。でも、知りたいことはある。何で、死のうとしたのか。わたし、詳しく知らないもの。」わたしは、姉に聞いたが返事が返ってこない。
しばらく、沈黙が続いた。車は、海岸沿いを走ってから少し小高い丘に登った。そこから、真正面を見ると海が見下ろせた。左側には、わたし達が卒業した中学校も見下ろすことができる。

丘には、一見、普通の民家が建ってあった。しかし、よく見ると、お店らしい雰囲気がただよっている。
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