流れ橋
わたしは、驚いて言葉がでてこなかった。

「お父さんって、とても真面目でしょう。田んぼ全部売ったこと、他の親戚に責められたのに、おじいちゃんの借金のことは、誰にも話をしなかったらしいの。」姉は、淡々と話をする。

「みんなに責められた時、誰にも借金のこといわなかったの?どうして、そんなこと。」わたしは、父の考えが分からなかった。

「田畑を売っても借金が残ったのにね。それから、誰にも迷惑がかからないようにと、一人で頑張ってたらしいんだけど。」姉は、ここまで話すとため息をついた。

「わたし、何も知らなかった。どうして、みんなにいわなかったのかな?」

「それは、おじいちゃんのいい思い出だけをみんなに思い出して欲しかったんじゃないかなって思うの。」姉が、悲しい気持ちを押し殺して話しているのがわかる。

「一人で抱えこむなんて、無理だよ。」わたしは、唇をキュッとかんだ。

「そう、ずっと無理してたのよ。」
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