空はなぜ青いのか
~プロローグ~


「私、あと5日で死ぬんです」


だから、と彼女は続けた。


「私の恋人になってください」


それが俺と彼女の始まりだった。








■空はなぜ青いのか■

~プロローグ~








西暦2115年。
人類は地球温暖化によって破滅の道を歩んでいたが、その問題に対して1つの答えを導き出した。
俺みたいな平凡な学生にはよくわからないが、簡単に言うと「空気中に漂う二酸化炭素を無害なものに変える」という単純なものだ。
それを可能にするシステムをどこかの学者が開発してからと言うもの、人類は自分達の住む場所をそのシステムですっぽりと覆ってしまった。
それこそ、ドーム型閉鎖都市《アルベイン》、最大のものは直径500km、最小でも直径50kmを越える。
アルベインは瞬く間に世界に広がり、日本でも15個以上は存在している。
そこに人々は引きこもり、外との交流は途絶え、この90年間アルベインから出てきた者は一人としていない。
もはや、1つのアルベインが1つの国家として成り立っているのである。
その中で人々がどんな暮らしをしているのかは知らないが、想像するに、化学の力によって物質を上手く循環させているのだろう。
ではなぜ、俺がこのように客観的にアルベインの話をしているのかと言うと、ただ単に、俺がアルベインの住民じゃないからだ。
アルベインが作られた際、そのような化学の力に頼りきった人類のあり方に異議を唱える者がいたのだ。
「人は自然と共に、自然に触れあって生きていくべきだ」
そう主張する団体、いわゆる《反アルベイン組織》。
しかし、組織の主張も虚しく、アルベインは作られた。
残った組織はアルベインに住むことを拒み、アルベインから離れた場所で村を作り、今でもひっそりと暮らしている。
そのひっそりと暮らしているうちの一人が俺、綾崎拓美だ。
言っておくが、別に俺はアルベインが嫌いなわけでも、そこに住む人々が憎いわけでもない。
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