空はなぜ青いのか
俺の祖母と祖父が若い頃反アルベイン派であったため、代々この村に住んでいるだけに過ぎない。
とうぜん、村の生活は楽なものじゃない。
資源はないし、食べ物も自給自足。
建物だってボロボロだ。
だけど、清んだ川は綺麗だと思うし、木々の緑を見ると心が癒される。
なにより、ここに住む人々の助け合って生きていく様を俺はなかなか気に入っている。
そんな村。
沢神楽が俺の住む場所だ。








これは、そんな沢神楽のある短くて長い夏の話。

俺はこの夏を決して忘れない。








「たくみ!」
「たくみにーちゃん!」
「抱っこー!」
「あ、ずるーい!」
「私も抱っこー!」
足元からわらわらと手が延びてくる。
「あーもう!うるせぇな!今、電話してるだろーが!少しは静かにしろ!」
その手から逃れるように身を引き、子供達の声にかきけされないように必死に叫ぶ。
「おい、飛鳥!お前どこにいるんだよ!」
俺一人に子供達を押し付けて消えた悪友の沢田飛鳥に携帯を通して怒鳴る。
『はは、随分と苦労してるみたいだね拓美』
笑いを含んだ爽やかな声に俺のイライラが急激に上がって行く。
「はは、じゃねーよ!どこほっつき歩いてるんだ!今日は俺とお前の当番だろ!」
携帯が折れるのではないかと言うぐらい握りしめる。
『ん~・・・残念。歩いてはいないよ。喫茶店で紅茶を飲みながら座ってるだけ。』
「もっと悪いわ!」
『そんなにイライラしてると血圧上がるよ?』
「誰が上げてると思ってんだよ、誰が・・・」
はぁ、とため息をつく。
「で?」
『ん?』
「だから、何かあったのかって聞いてんだよ」
小さく息を飲む音が聞こえ、数秒の沈黙。
『すごいね、拓美は。なんでわかったの?』
「喫茶店は今日は定休日だからな」
そうゆうこと、と飛鳥が苦笑する。
『朝比が発作を起こしたんだ。いつものだから心配はいらないんだけど、念のために・・・ね』
「そうゆうことは早く言えよ。・・・仕方ねぇから今日は許してやる」
『今度お茶でも奢ろうか』
「男二人でお茶なんて寂しいだけだろ」
飛鳥と俺が二人で並んでお茶を飲んでいるのを想像して笑い出しそうになる。
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