空はなぜ青いのか
そう言って男の子の頭に手を乗せてわしゃわしゃと髪の毛をかき混ぜてやる。
「拓美にーちゃんだってパワフルじゃん!知ってるよ!あーゆうのって大人げないって言うんだ!」
「なんだとー!」
生意気なことを言う男の子の髪の毛をさらにかき混ぜてやる。
笑いながら逃げる男の子がはっと気づいたように道の先を見た。
その目線の先を見るとエプロンをつけた女の人が箒を持って、道に落ちた葉を掃いている。
女の人もこちらに気づいたのか男の子に向かって緩く手を振り、俺に向かって挨拶がわりにペコリとお辞儀をした。
「お母さんだ!拓美にーちゃん、またね!」
そう言って男の子は手を振りながら一目散に駆け出した。
男の子が嬉しそうに母親に駆け寄って、母親が愛しそうに男の子くしゃくしゃになった髪の毛を撫でる。
その姿がひどく眩しくて、背を向けて俺も家に向かって歩き出した。








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「はぁ・・・」
なぜか憂鬱な気持ちになってしまい、重々しく溜め息をつく。
空を見上げると太陽の姿はなく、星がだんだんと煌めき始めていた。
早く帰らなければ、と目の前にある寂れた踏切に足を踏み出す。
村の外れにある俺の家は、この踏切を越えてまた5分ほど歩いたところにある。
学校からも商店街からも遠く、立地条件は最悪だ。
ちなみに、俺の家から一番近いところにある家まで歩いて20分かかる。
「腹減ったなぁ・・・」
情けない音をたてる腹を押さえながら降りたままの遮断機を潜り抜ける。


ジャリ



「ん?」
地面を踏みしめる音が聞こえた気がしてそちらを向く。
一瞬自分の足音かと思ったが、俺の足の下に広がるのは薄汚れてはいるが、コンクリートで舗装された道だ。
「・・・気のせいか?」
そう思って一歩足を踏み出す。



ジャリ


ジャリ



気のせいじゃない。
俺は遮断機と遮断機の間。
つまり、線路のど真ん中で立ち止まり、闇に包まれた線路の先を見つめる。
人が通るために作られたコンクリートの道は遮断機の範囲にしか広がっていないため、その先にある線路の下は砂利道だ。
先ほどの、いかにも石の上を歩いてますと言う音はそこからしか発せられるはずがない。
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